巨人・大江竜聖はピンチで凄い球になる。恩師も驚くマウンドでの生命力 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Sportiva

 ところが、ここからの大江のピッチングが凄かったという。

「ストレートしかないという状況で、その球がどんどん強くなるんです。"生命力"あるなぁって思いましたね。ピンチになっても自分の力で切り抜けられる。逆境になった時ほど強いハートを持って戦えるヤツですね」

 絶対に打たれてはいけない4番打者には、渾身のストレートで空振り三振。凡打に打ちとろうとか、そんな発想はない。相手を"粉砕"しないと気が済まない......勝負根性が大江のピッチングを支えていた。市原監督が続ける。

「ウチからプロに入った小杉陽太(元DeNA)や鈴木誠也(広島)もそうだったように、高校生の頃というのは表情を見れば何を考えているのかわかるし、どこかに"弱さ"や"かげり"のようなものがあるのが普通なんです。でも大江にはそういうところがまったくない。要するに、たくましいんですよ、いろんな面で。なんとか一人前にしてやりたいってこっちが気を遣わなくても、自分でどんどん成長していく。監督をして20年以上になりますが、大江みたいな内面の強さをもった選手は初めてでしたね」

 プロ1年目の昨シーズン、大江はイースタンリーグでほぼ先発として12試合(62イニング)に登板し、4勝3敗、防御率2.30という成績を残した。「ずいぶん投げさせてもらったんだなぁ......」と調べてみたら、イニング数は今村信貴、アダメス、メルセデスに次いでチーム4番目の多さだった。

 市原監督は嬉しそうに、こんな話をしてくれた。

「オフにね、大江が(高校の)グラウンドに来たんですよ。プロ野球選手なんだから、いろいろ忙しいはずなのに、次の日、また来たんです」

 二松学舎大付のグラウンドは千葉県柏市にある。神奈川県座間市にある大江の実家からは3時間近くかかるはずである。

「なんか、そういう可愛げのあるヤツなんですよねぇ(笑)」

 市原監督の表情も自然となごむ。

「つくったところが全然なくて、自然体なのになぜか年上に可愛がられる。ああいうのも一種の"愛されキャラ"なのかもしれないですね」

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