打者心理でみる「松坂大輔がよみがえる唯一の方法」を名コーチが説く (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 つまりバッターにとって"嫌な投手"とは、そうした打者心理を理解している投手である。打者有利のカウントで平然とスローカーブを投げたり、インコースにズバッと投げ込んできたり、あえてバッターが狙っているコースに投げ、ちょっとだけ変化を加えたり......。要するに、そのためには150キロを超すストレートも、バットに当てさせない変化球も必要ない。特に先発投手は、対戦するひとりひとりの打者に対して完璧な制球や配球などしなくてもいいのだ。

 さて、松坂大輔だ。日本だけでなくメジャーでもあれだけの実績を残して活躍してきた彼なら、そうした打者心理を理解していないはずはない。

 しかし、日本球界に復帰してからの彼を見ていると、故障の状態もあって一概には言えないが、威力のあるボールを蘇らせることに重きを置いてきたように感じられた。かつてのように、ストレートで圧倒したいという気持ちはわからないわけではない。ただ今のボールを見ていると、そうしたピッチングで打者を打ち取るのは難しいと言わざるを得ない。

正直、スタイルを変えるという作業は簡単ではない。だがもう一度、一軍のマウンドで躍動したいのなら、発想の転換が必要かもしれない。すなわち、打者心理を読んで、徹底的にそのウラをつくピッチング。それが、松坂が蘇る唯一の選択肢ではないだろうか。

(つづく)

■山本昌は、中日ドラフト1位の鈴木博志をこう評価していた>>

■松坂大輔、ドラゴンズでの復活に向けて「痛みへの恐怖心」に勝てるか>>

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