打者心理でみる「松坂大輔がよみがえる
唯一の方法」を名コーチが説く

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載●第18回

 2月1日から始まったプロ野球キャンプも各地で中盤に入っている。なかでも注目を集めているのが、今シーズンから中日ドラゴンズのユニフォームを着ることになった松坂大輔だ。

 2015年にメジャーから日本球界に復帰しソフトバンク入団を果たしたが、在籍した3年間で一軍登板は1試合のみ。一時は"現役引退"も囁かれたが、現役続行を宣言し、テスト生として中日入団を果たした。

 キャンプでは精力的にブルペンに入るなど、不安視されていた肩の状態も良さそうだ。完全復活のために松坂がすべきこととは何なのか? 長年、ヘッドコーチや打撃コーチとして野球界に携わった伊勢孝夫氏に、打者目線で見た松坂復活のポイントを語ってもらった。

(名コーチが嘆く、プロ野球キャンプ早々にリタイア選手が出るのはなぜか 第17回)

テスト生として中日入団を果たした松坂大輔テスト生として中日入団を果たした松坂大輔 打者にとって"嫌な投手"とは、160キロの剛速球を投げる投手でもなければ、えげつない変化球を駆使する投手でもない。それは「打てそうで打てない投手」である。打者の心理とはなんとも微妙で、それこそ1球1球によって変わってくる。"嫌な投手"とは、そんな打者心理を見透かして打ち取ろうとしてくるタイプなのだ。

 野球のカウントは0-0から3-2まで12種類あるが、そのなかで打者有利のカウント、投手有利のカウントというのがある。打者有利のカウントとは、1-0、2-0、2-1、3-1などだ。当然、打者は打つ気満々で、ある種イケイケの状態である。

 投手にしてみれば見逃しでストライクを取ることがベストだが、少しでも甘く入ってしまえば痛打を浴びてしまう。超一流と呼ばれる投手はそういう状況からでも簡単にカウントを整えてくるのだが、そうした投手はプロの世界でも数えるほどしかいないのが実状だ。

 私の経験上、投手が狙い通りのコース、高さに投げられるのは、たとえば10球のうち5球あるかないか。つまり、半分以上は意図していないところに投げているというわけだ。それでも打者が10打席で3回ヒットにすれば褒められるというのはどういうことか......。要するに、それだけ打者は打ち損じをしているということになる。

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