4割男・近藤健介に憂いなし。私たちは異次元ゾーンを目撃するのか (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • 田口有史●撮影 photo by Taguchi Yukihito

 慣れない相手との対戦について聞かれたときの答えだが、相手は宿敵・韓国で、しかも3点ビハインドで残り4イニングの先頭打者という場面だった。日の丸を背負うプレッシャーを感じながら自分の打撃をできたのは、シーズン中に培(つちか)ったメンタルコントロール術が大きい。

「今年(2017年)は淡々とやることを心がけていました。そういう意味では3ヵ月くらい凡打にも左右されずにできて、気持ちの浮き沈みがなくなってきました。シーズンからいいつながりで臨めていると、今日改めて思いました」

 2015年にリーグ3位の打率.326を記録したように、もともと打撃技術には非凡なものがある。そこに心のコントロール術が加わり、次元の違う領域に達しつつある。

「素質が飛び抜けています。見ていて誰もが、『この選手は違うな』と思うんじゃないですか」

 2016年6月、二軍の本拠地・鎌ヶ谷での打撃練習中、糸を引くような弾丸ライナーを連発する近藤を見て、田中幸雄二軍監督(当時)は目を細めた。この年、近藤は春季キャンプからひざ痛に苦しめられ、梅雨の時期には二軍でリハビリ中だった。

 過去2シーズン、近藤はひざ、太もも、そして腰と、故障に悩まされている。しかし昨年、腰部の神経を圧迫することで下肢(かし)に痛みやしびれを起こす腰部椎間板ヘルニアの手術を受けており、再発予防策を欠かさなければ同じ苦しみに悩まされる可能性を大きく軽減できるだろう。戦いの資本となる肉体面さえ整えば、昨シーズン幻に終わった記録にふたたびチャレンジすることができる――。

 中田翔や西川遥輝という先輩の背中を追いかけてきた近藤は今オフ、若手選手たちを引き連れて鹿児島の徳之島で自主トレを行なった。大谷が抜けたチームで、周りを牽引すべき立場にあることを自覚しているはずだ。

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