4割男・近藤健介に憂いなし。私たちは異次元ゾーンを目撃するのか (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • 田口有史●撮影 photo by Taguchi Yukihito

「台湾球界の4割打者」こと王柏融(ワン・ボーロン)らも出場したアジアプロ野球チャンピオンシップ2017で、同じプロ選手が「次元が違う」と言うほど近藤の打撃力は際立っていた。優れた選球眼で相手投手のボールを見極め、抜群のバットコントロールで外野の間を抜いていく。

 そして見逃せないのが、プレッシャーのかかる舞台で自らの力を発揮するメンタルだ。

 プロ野球の歴史を振り返っても、本当の意味で打率4割の可能性を感じさせられる打者は数少ないなか、3ヵ月未満だったとはいえ、なぜ近藤は"夢の記録"にチャレンジできたのか――。この理由が凝縮されていたのが、11月16日、大会初戦の韓国戦だった。

 1-4で迎えた6回、韓国は先発の右腕・張現植(チャン・ヒョンシク)から左腕・具昌模(ク・チャンモ)にスイッチした。先頭打者の近藤は初球のストレートを見逃すと、2球目にも続けてきたこの球をレフト前に弾き返している。

「映像を見たら真っすぐ系統が多かったので、初球の真っすぐでしっかり軌道とタイミングを計りました。次も真っすぐが来ると思い、しっかり打ちにいけましたね。イメージと自分が体感したときの誤差があまりなかったので、すぐに対応できたと思います」

 投手は打者のタイミングを外そうとしてくるのに対し、打者はいかにタイミングを合わせるかが勝負の分かれ目になる。その際に必要となるのが、選球眼と対応力だ。

 近藤の選球眼は単に「ストライクとボールを見極める能力」というレベルではなく、事前にインプットしたイメージと打席で感じた印象をすり合わせ、相手の投球を立体的に掴むことができる。それを瞬時にやってのけるから、初見の相手にもすぐに対応可能なのだ。

「自分は(相手の球を)なるべく見ていきたいほうなので、そこも落ち着いていたと思います」

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