西武・秋山翔吾「書かれたら営業妨害、でも話します」という打撃理論 (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • 西田泰輔●撮影 photo by Nishida Taisuke

「今日はちょっと(身体を)開いて、ちょっと引っ張ってもいいポイントで打とうと思っていました。(2ストライクに)追い込まれていたから、ファウルにすることやバットに当てることを考えていたら、ああいう方向でバットの面が出た(左打席で、ストライクゾーンの真ん中付近に来るボールの右下部分を叩くイメージ)。

 逆に言えば、(身体が)閉じていたら、あそこに打球が飛んでいない可能性がある。僕の意識と打球が出た方向は別でしたけど、ああいうボールの見え方をするんだな、という打席ではありました」

 大半の打者が「感覚だから説明できない」と片付けるどころでも、秋山は自分のプレーを言語化することができる。頭で理屈をわかっているから、打席で再現できるのだ。そこにこのバットマンの真髄はあり、聞かれたことには答えるところに人としての清々しさがある。

 最後に付け加えておきたいのが、タフネスだ。フルイニングに出場して首位打者に輝いたのは、1969年の王貞治、1995年のイチロー、2001年の松井秀喜らに次ぎ史上6人目の快挙だった。さらに言えば、秋山は2017年シーズン開幕前のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)から戦い抜いている。強化試合で負った右足第5指骨折を抱えながら、だ。

「とにかくフルイニング最後まで出るのが、今の自分の目標です。チームとしても(球団誕生40周年の)節目ですし、自分も30という年になるので、それでもやっぱりさらに若々しく激しいプレーもやっていきたい」

 春季キャンプが始まる6日前、出陣式に集まった3104人のファンの前で秋山はそう宣言した。現在西武が開幕に向けた準備を進める宮崎県南郷町で、秋山は連日のように最後まで室内練習場に残り、黙々とバットを振り続けているという。

 12球団唯一の3シーズン連続フルイニング出場を続けるタフネスと、球界屈指の打撃技術、それらをつくり上げる超マイナス思考――。心技体を掛け合わせ、バットマンとして上積みを続けていく。

 それが、"現代の鉄人"とも形容すべき秋山翔吾の素顔だ。

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