西武・秋山翔吾「書かれたら営業妨害、でも話します」という打撃理論 (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • 西田泰輔●撮影 photo by Nishida Taisuke

「コンパクトに振っているかどうかはわからないです。小さく振ることがコンパクトではないし。しっかりタイミングを取って、振り出しのときに大振りにならないような形がバッターとしては理想です。これがコンパクト、コンパクトと言っていると、フォームが小さくなったり、タイミングの取り方が小さくなって差し込まれたりするのはよくあること。今日はある意味、逆のことをやったという感じです」

 バットを最短距離で出すのがコンパクトなスイングだが、そこばかり意識するとフォームが小さくなりがちだ。そうならないためにゆったり構え、しっかりタイミングを計ってインサイドアウトのスイングで最短距離にバットを出し、ボールへの出力を大きくする。頭で考えるだけでも難しいことを打席でやってのけるから、リーグでもっとも高い打率を残せるのだ。

 そうした打撃技術はもちろん、相手バッテリーとの駆け引きにも長けている。18.44メートルの距離で対峙するピッチャーほどではないだろうが、秋山との腹の探り合いは取材者としても一筋縄ではいかない。

「それを書かれたら、営業妨害です。でも聞かれたら、ちゃんとしゃべりますよ」

 ある意味、記者冥利(みょうり)に尽きるセリフを秋山から言われたのは、2017年8月1日、メットライフドームで行なわれた楽天戦の試合後だった。

 この日の相手先発は、左スリークオーターの辛島航(からしま・わたる)。このシーズンの対戦成績が7打数1安打だったように、ヒットメーカーの秋山にしては毎年のように分が悪い。ストレートの平均球速は130キロ台後半だが、「パ・リーグでもっとも打たれにくいチェンジアップ(「パ・リーグTV」のHPによると、2016年のパ・リーグ投手のチェンジアップでもっとも被打率が低かった)」を織り交ぜ、とりわけ左打者には厄介な相手として立ちはだかる。

 だが、この日は3回の第2打席で、左中間フェンス直撃のタイムリー二塁打を放った。その理由を掘り下げるべく質問を続けると、最初は口数の少なかった秋山だが、上記の宣言直後、本当にすべてを明らかにした。

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