「空振りばかりの子豚ちゃん」山川穂高が、西武の4番に変身するまで (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • 西田泰輔●撮影 photo by Nishida Taisuke

「僕のバッティング練習は雑に振っているように見えるかもしれないけど、それでもいいと思っています。身体をとにかく強く、大きく、速く使う。そうやってキレを出しておく。試合になったとき、僕的にはあれでも抑えて振っているつもりなんですよね。だから、当たる瞬間の部分で速く振れているのかなと思います」

 練習でキレを出しておけば、試合では少し力を抑えても出力が高まる。さらにスイングの力を調整することで、コンタクト率を上げることができる。その結果、一軍再登録された7月8日以降、猛烈な打棒を発揮していった。

 真っすぐに対してはフルスイングできなくても本塁打にすることができる一方、変化球に対してはすべて思い切り振りたいというのが、山川の根本的な考え方にある。それを打席で実行し、かつ結果に結びつけるために不可欠なのが、"振りにいく"姿勢だ。

「自分が打とうとしたボールに打ちにいけて手が出たか、あるいは打ちにいって見逃すことができたかが、すごく重要です。見逃そうと思って見逃すのはものすごく簡単なので、そうではなく、打ちにいこうと思って打つ、打ちにいこうと思って見逃す」

 球界屈指のパワーを誇る長距離砲が、超積極的に打ちにくる。威圧感に晒(さら)される相手バッテリーは低めに外れる変化球を振らせようとし、その罠に引っかかっていたのが、プロ入りからの数年間だった。

 だが、技術と心を一本につなげることで自分自身をうまく操れるようになり、相手の攻めに対処できるようになった。だからこそ2017年後半、パ・リーグのどんなバッターよりも強烈なインパクトを残し、2ヵ月続けて月間MVPを獲得することができた。

 山川の活躍は西武にとどまらず、11月のアジアプロ野球チャンピオンシップ2017ではU24の侍ジャパンにオーバーエイジ枠で選ばれている。西武の二軍から一軍の4番に成り上がり、日の丸の4番を狙えるところまでたどり着いた。

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