防御率162.00からの逆襲。
カープ左腕はOB大野豊の再来となるか
セ・リーグを連覇した広島が新たな黄金期を築こうとしている。
中心選手の田中広輔、菊池涼介、丸佳浩の"タナキクマル"トリオはまだ28歳。先発ローテーションも、勝利の方程式を担うブルペン陣もまだ20代と若い。さらに今春のキャンプでも、20歳前後の若い投手たちが数多く一軍キャンプに抜てきされている。
新人選手がひとりも一軍キャンプに参加しない今春は、昨年球団初のファーム日本一に大きく貢献した高橋昂也、坂倉将吾の19歳バッテリーが注目を集めるだろう。ただ、個人的に今季の大ブレイクを予感させられるのは、高卒4年目の左腕・塹江敦哉(ほりえ・あつや)だ。
150キロを超すストレートが魅力の4年目・塹江敦哉
注目度の高い後輩との違いは、"一軍で失敗した経験"があること。勢いだけでなく、怖さも知る。4年目の今季こそ、結果を求められる1年となる。
塹江は、高卒2年目の一昨年にプロ初登板。25年ぶりのリーグ優勝を果たした翌日、9月11日の巨人戦で7回のマウンドに上がった。
しかし、先頭の長野久義に初球をレフトスタンドに運ばれると、その後も安打や連続四球を与え、さらに一死満塁から連続長短打を痛打される。わずか1アウトしかとれずに6失点。ほろ苦い......と言うには厳しすぎるデビューとなった。防御率は162.00という数字が記録され、話題にもなった。
それでもデビュー登板から中4日で中継ぎ登板し、1回を無安打、無失点に抑えると、中2日で先発のチャンスにも恵まれた。初登板の1アウトから2度目の登板は3アウトに、そしてプロ初先発では5回2安打2失点でプロ初黒星となったものの、15個のアウトを奪った。
防御率162.00のスタートについても、OB大野豊氏の前例がある。大野氏も防御率135.00からスタートするも、そこからはい上がり、通算148勝、100セーブを記録するカープのレジェンド投手へと育っていった。
塹江は「162」のまま終わらずに、この年、防御率を11.37まで挽回した。下を向いたまま終わらなかった姿に、翌年の成長を期待させた。
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