名コーチが嘆く、プロ野球キャンプ早々にリタイヤ選手が出るのはなぜか (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Kyodo News

 走ることの重要性は、特に野手に限っていえば、下半身の鍛錬と体のキレを出すために必要なメニューだと思う。バットを振る、ボールを投げるというのは、しっかりした下半身がなければ満足な動きにならない。ダッシュは俊敏な動きにつながるし、ロングランは心肺機能を高め、スタミナを養う。これだけ有効なトレーニングにもかかわらず、走る量が減っているのは残念でならない。

 近年、シーズン終了後に秋季キャンプが当たり前のように行なわれているが、私は必要ないと思っている。たった3週間程度で何ができるのかといえば、実はそれほど多くない。「これだけ泥だらけでやった」という自己満足だけで、翌春のキャンプの方向性など、案外できてない場合が多いのだ。

 結局、秋季キャンプで追い込んだとしても、その後、2カ月ほどブランクができてしまう。ならば秋季キャンプはやらず、その分、1月10日ぐらいから球団主導の全体練習を復活させ、しっかりとしたメニューで基礎トレーニングをして、キャンプに臨んだ方がよほど効果はあるだろうし、故障の不安も減るのではないか。

 余談だが、選手やコーチですら勘違いしがちなのは、キャンプの練習が"貯蓄"だと思っていることだ。

「1シーズン耐えられる体づくり」という言葉を聞いたことがあるだろう。しかし実際には、キャンプでどれだけ鍛えたとしても、オープン戦、公式戦と時間が経つにつれ、人の筋力や持久力は確実に落ちていく。

 ある研究者によれば、「キャンプで鍛えた筋力や持久力は3カ月で枯渇する」という。つまり、キャンプでつくった体を維持していくためには、オープン戦期間中はもとより、公式戦に入ってもトレーニングは必要ということだ。

 キャンプが重要なのは言うまでもないが、だからといって絶対ではない。公式戦で力を発揮するための入り口に過ぎないのだ。

(つづく)

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