ドラフト1位が30歳で戦力外。片山博視が諦めずに語っていたこと

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 毎年、年末に放映されて大きな話題となるTBSの番組『プロ野球戦力外通告 クビを宣告された男達』──。2017年の放送で取り上げられた1人に、2005年の東北楽天ドラフト1位・片山博視がいた。

 長身の左腕投手として大きな期待を背負って入団した片山は、ブルペンの一角として活躍した期間もあったが、それ以上の長い時間をケガとの戦いに費やしてきた。そして、手術、打者転向、育成契約など数々の試練を経て、ついに2017年シーズン後に球団から戦力外通告を受ける。

 しかし、それでも片山はプレーし続けることを希望して、プロ野球の合同トライアウトに参加。そのとき、Sportivaの取材に対して、現役続行への思いを率直に吐露していた。そして来季は独立リーグでのプレーを決断。30歳を迎えた元ドラフト1位は、なぜ、そこまで野球にこだわったのか。その心情をもう一度伝えておきたい。

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 身長は今回トライアウトに参加した51人のなかで最も高い192センチ。その大きな背中にある番号は「001」。元楽天のサウスポー・片山博視はこの2年間、育成選手としてシーズンを過ごした。ただ、過ごしたといっても、今年3月に左ヒジの側副靱帯の再建手術(トミー・ジョン手術)を受け、リハビリに明け暮れる毎日だった。

トミー・ジョン手術を受けた時点で、戦力外通告を受けるかもしれないという覚悟は持っていました」

トライアウトで心境を語っていた片山博視トライアウトで心境を語っていた片山博視

 4月に30歳となった育成選手がシーズン前に手術を受けるということは、そういうことでもあった。10月1日に球団から戦力外通告を言い渡されると、片山はトライアウトを目標とし、調整を続けてきた。

 手術から8カ月。良化途上での登板は、打者4人に対し、1安打、1四球、2奪三振。この日の最速は134キロだったが、片山は「予想していたよりも15キロぐらい速かったです」と顔をほころばせ、こう続けた。

「ピッチング練習でも120キロぐらいがほとんどでしたし、今日のブルペンでは(ヒジに)少し痛みがありました。自分でも大丈夫かなと思ったんですけど、思っていた以上に投げることができました」

 正直、ボール自体は、ネット裏に並んだ各球団の編成担当者の目を引くものはなかった。しかし、登板後の片山は終始、晴れやかな表情を浮かべ、報道陣の質問にも丁寧に答えていた。

「ここで投げられたことが一番。結果より、まずマウンドに立てるかどうかだったので......。生き残りの場ですけど、本当に久しぶりに実戦のなかで投げられて、やってきたことが間違いじゃなかったと思えました」

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