五十嵐亮太が「53」に秘める思い。「俺はゴミじゃない」からの20年

  • 山岡則夫●文 text by Yamaoka Norio
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 劇的な勝利で2年ぶりの日本一を達成したソフトバンクの選手たちは、歓喜に浸る間もなく、その数日後には2018年を見据え、宮崎で秋季キャンプを行なっていた。一部ベテランや、アジアプロ野球チャンピオンシップの侍ジャパンに選ばれた選手を除いて、ほぼすべての選手が参加。ボールを握った練習こそ少ないが、各自テーマに沿ったトレーニングに汗を流していた。

今季46試合に登板し、ソフトバンク移籍後最多となる6勝をマークした五十嵐亮太今季46試合に登板し、ソフトバンク移籍後最多となる6勝をマークした五十嵐亮太 投手陣は施設内にある陸上競技場を使って、とにかく走っていた。千賀滉大や東浜巨といったシーズンを通して結果を出した投手たちも全員が同じメニューをこなしている。長距離、短距離、サーキットなど、見ているこちらがしんどくなるほど、ハードなメニューが組まれていた。そのなかでひと際、精力的に動いていたのが投手陣最年長の38歳、五十嵐亮太だ。

「もう完全に陸上部。めっちゃ走ってるよ。足が痛い......」

 そう軽口を叩きながらも、黙々とメニューを消化していく。

「年内はボールを握らないので、完全に下半身。故障した箇所はもう平気だから、ひとつひとつ確認作業を行なっている段階。どこまでコンディションが戻っているか。それとも足りないのか。せっかくの機会なんで、細かい部分までしっかり確認しながらやっています」

 上半身からは湯気が立ちのぼり、連日の強化運動で下半身はパンパン。「明日のオレが心配だ」と笑いながら球場をあとにする毎日だった。

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