鳥越コーチの退団こそホークス最大の痛手。名手を育て上げた魂のノック (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

 ちなみに、鳥越コーチは2009年から2年間は二軍監督も務めていた。現在の主力選手の多くは、その時代からの教え子である。

 球界を代表する名ショートとなった今宮は、2009年のドラフト1位でプロ入りしており、まさしくそのひとりである。今宮は言う。

「ホークスの選手は、内野のボール回しにもこだわりを持ってやっています。僕はプロに入った当初からそれが当たり前の環境のなかでやってきました。正直、ほかの球団のシートノックを見てもパッとしないと感じることもあります。ただ、ボールを受けているだけというか......。練習の1球からでも集中して、常に真剣にやる。それがホークスの守備力の高さにつながっているのだと思います」

 気の緩みなど一切許さない。鳥越コーチの観察力には、いつも感心させられた。

 三塁手として5年連続6度目のゴールデングラブ賞に輝いた松田も言う。

「何度も叱られました。ノックを打つ鳥越さんが、常に気を抜くことなく大切に1球ずつ、心を込めて打ってくれるんです。だから僕らは、遊び感覚でボールを捕るなんてことは絶対にありえない。その積み重ねなんです」

 そんなソフトバンクの選手たちから聞くのは、「僕らがアマチュアの手本になるような練習をしないといけない」という言葉だ。今宮の言葉が再び思い出される。

「基本があっての応用。応用があっての応用じゃない。基本がないと次のステップに進めません。僕もそこからスタートしました。いま、基本の"き"から始めて、やっと"ほ"まできたかな。まだまだっすよ」

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