不祥事からのトライアウト。奥浪鏡、「もう一度、野球で」と願う4打席 (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 午前中はグラウンドやトレーニングルームで自身の練習をし、午後からはチーム練習に参加。そのなかで心がけていたことは「とにかくバットを振ること」だった。

 創志学園時代、長澤が「漁師の網打ちのような......」と例えた、前の大きなスイングから高校通算71本塁打を記録。2013年にドラフト6位でオリックスへ入団した。

 ちょうど昨年の今頃、プロ3年目を終えた奥浪に話を聞く機会があった。そのとき、奥浪は高知で行なわれている秋季キャンプのメンバーから漏れ、神戸で居残り練習をしていた。しかし本人はそれを発奮材料に「毎日1000本ぐらい振っています。高校のときも相当スイングさせられましたけど、今はこれまでの人生のなかで一番と思えるぐらい振っています」と4年目のシーズンに懸ける思いを語っていた。

「今もそこは変わっていません。スイングスピードを上げてやろうという思いで、毎日振ってきました。それに今年の自主トレのときに小谷野(栄一)さんから『ティーでも、フリーバッティングでも初球からフルスイングしないと絶対ダメだ』と言われて、そこも頭に入れながらやっています。だから今日も、今の自分が残せるとしたらフルスイング。そう思って打席に立っていました」

 4打席のなかで仕留められそうなボールはあったかと聞くと、金子(丈・中日)さんの初球です」と即答した。それは第4打席の初球の甘いストレートだった。

「間違いなくあの球が一番甘かったんです。でも、見逃してしまって......。一塁ランナーが走ったのが見えて『あっ』となってしまったのもあるんですけど、そういうところも含め、まだまだ自分の弱さだと思いました」

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