カープ退団の石井琢朗コーチが明かす、東出&迎コーチとの役割分担

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

【連載】チームを変えるコーチの言葉~広島東洋カープ打撃コーチ・石井琢朗(3)

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今シーズン限りで広島を退団した石井琢朗コーチ今シーズン限りで広島を退団した石井琢朗コーチ 指導者として、選手に対して、いかに意識を持たせるか――。

 今シーズン限りで退任した広島の打撃コーチ・石井琢朗は、意識という言葉をよく使い、重要視する。コーチの仕事といえば技術指導が主となるところ、練習では技術よりも意識を変えることが第一と考えてきた。試合での「7割の失敗を生かす攻撃」にしても、後ろにつなごうとする意識の問題。石井にその真意を聞いた。

「僕は『はじめに意識ありき』と思っています。最初から形があるんじゃなくて、意識のあるところにしっかりした形はできる、という考え方。失敗も成功もそうなんですけど、意識を持って取り組んだことを積み重ねてきて、できたものが形だと思うんですよ。で、その取り組みを手伝うのが僕らの仕事じゃないかと」 

 石井には「打撃とは形がないもの。正解はない」という持論がある。ゆえに選手に対しては、打撃の形自体の良し悪しではなく、「どういう意識を持つとその形に近づけるのか」を伝えてきたという。

 こうした考え方は、現役時代の石井が接したコーチの指導に通じるところはあるのだろうか。1989年に栃木・足利工高からドラフト外で横浜大洋(現・DeNA)に入団し、4年目に投手から野手に転向した石井だけに、プロで教わったことは少なくなかったと思われる。

「転向した当初、打撃はもちろん走塁、守備も全部、一から教えていただいたので、コーチの影響力はすごくありました。打撃なら高木由一さん、守備なら岩井隆之さん、走塁なら弘田澄男さん。特に高木さんは最初からずっと一緒で、しばらくは手取り足取りで......。それがレギュラーになると、コーチからはいろいろ言われなくなりました。だから、そのあたり僕もコーチになって、レギュラーとして出ている選手には静観するというか、ちょっと一歩引いたところから見て、気になるところだけ、ひと言、ふた言、言うぐらい。あまり技術的なことは言わないようにしてきたんですよ」

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