【イップスの深層】強肩外野手・中根仁が「カットマンに返球できない」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

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「プロに入って、裏方さんから聞いたことがあるんです。『誰々にティーを上げるとき、手からボールが離れないんですよ。ティー上げイップスなんです』って。それを聞いて、あぁ、俺もそうだったなって(笑)。自分にとってイップスとのかかわりは、この大学1年時が最初でしたね」

 現役時代と変わらぬ端正な顔立ちに爽やかな笑顔をたたえて、中根仁は「ティー上げイップス」について語り始めた。

「ティー上げって、相手が準備して、構えて、いざ投げるときに『相手に合わせないといけない』と思い始めるんです。でも試合もそうですけど、本来は投げ手主導でバッターがタイミングを取るわけじゃないですか。それをお互いに『合わせよう』と考えているから、よけいにズレて『おい!』となるんです」

 プロでコーチになってからはリラックスしてトスできるようになったが、「ティー上げイップス」はしばしば目にすることがあった。ある監督が主力選手へのティー上げを買って出るも、実は監督が極度のティー上げイップスだったこともある。立場上とがめるわけにもいかず、対処に苦慮したという。

「やさしい性格の人とか、きっちりやりたい性格の人がティー上げイップスになりやすい気がしますね」

 中根は現役時代、東北高、法政大と名門校で腕を磨き、1988年にドラフト2位で近鉄に入団。強肩強打の外野手として活躍し、98年に横浜(現・DeNA)に移籍すると「マシンガン打線」の一角として日本一に貢献した。

 大学時代にティー上げイップスに悩まされた中根だが、プロではスローイングのイップスと人知れず戦っていた。

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