内川とサファテの気迫。「巨大戦力が心をひとつ」にしたら、もはや最強 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 その左腕をゲーム中盤の5回に投入し、結果、梶谷にセフティー気味の送りバントを決められた。走者が進み、打者が右のホセ・ロペスとなったところで嘉弥真は降板。さらに後を継いだ石川柊太が直後、ロペスに勝ち越しの2点タイムリー。結果としては裏目の継投となった。

 梶谷は1、2打席目で東浜の前にいずれも三振。ただ東浜の状態が落ちていたことは明らかで、交代のタイミングとしては間違いなかったように思える。しかし、嘉弥真の投入は果たしてベストだったのか......。シーズン中、盤石を誇ったリリーフ陣の失点。重くのしかかる2点になったことは間違いなかった。

 それでも、ここから6回は森唯斗、7回はリバン・モイネロ、8回には岩嵜翔と勝ちパターンのリレーで必死の防戦。「明日はない」と言わんばかりの継投を見せた工藤監督は試合後、連敗を喫した後のこんな心境も口にした。

「正直、心のどこかで『7戦までもつれんじゃないか』という気持ちもありました。でも、それを押し殺して、今日なんとかしようという気持ちで戦い、その思いが叶ってくれました」

 過去の日本シリーズで3連勝から3連敗したケースは4度あるが、うち3度は3連敗後の4連勝で決着している。そのひとつが、西武が広島を大逆転で破った1986年(初戦は引き分け)の日本シリーズだった。

 崖っぷちの第5戦で延長12回を投げ抜き、最後には自らサヨナラヒット。シリーズの流れを変えたのが若き日の工藤監督だった。そんな強烈な思い出は、短期決戦の怖さとしてその身に深く刻まれていたのだろう。だからこそ、「今日なんとかしよう」と思い定めたのだ。

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