先制なら勝率ほぼ9割で、
1番・柳田悠岐が与える恐怖のプレッシャー

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 ソフトバンクの連勝スタートとなった日本シリーズ。ヤフオクドームでの2試合を見ながら、日本シリーズ開幕前日に行なわれた会見で工藤公康監督が語った言葉を何度も思い出していた。

「先手を取って、6回以降は万全のリリーフ陣がいますから、1点でも勝ち越したなかで、その点差を守り抜いていきたい」

 実にシンプルだが、今年のソフトバンクの強さはそこに集約されている。

 73勝9敗――この数字は、今季ペナントレースでソフトバンクが先制したときの戦績だ。勝率.890と驚異の数字が示すように、"先行逃げ切り"の王道スタイルでシーズンを勝ち抜いてきたことがわかる。

ここまで日本シリーズ2試合で8打数4安打と好調の柳田悠岐ここまで日本シリーズ2試合で8打数4安打と好調の柳田悠岐 そして日本シリーズでもこの流れをつくったのが、1番の柳田悠岐だった。第1戦の1回表、柳田はDeNA先発の井納翔一の3球目をセンター前に運び出塁。この一打でヤフオクドームを埋め尽くしたソフトバンクファンのボルテージも一気に上がった。

 続く今宮健太がバントで送り、3番のデスパイネがタイムリー。何よりほしかった先制点をあっさり手に入れたのだ。この後も着実に点を重ねたソフトバンクが10対1で快勝。試合後、工藤監督は試合の流れをつくった核弾頭の働きを称えた。

「柳田くんがしっかりヒットで出てくれたおかげで、みんなの緊張がほどけた。これからも普段通りの野球をやっていきたい」

 今季、柳田はシーズン終盤の9月26日の日本ハム戦でスイングした際、右腹斜筋を痛めて戦列から離れた。全治3週間の診断に、ポストシーズンの出場が危ぶまれていた。柳田不在の間、チームは4勝6敗と負け越し。さらに、楽天とのクライマックスシリーズ(CS)でも連敗スタートを喫するなど、あらためて存在感の大きさを示した。

1 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る