明かされる日本シリーズ秘話。野村「ID野球」の陰に仰木監督の友情 (5ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Kyodo News

 結局、3戦目は2対7で落とした。短期決戦において最も怖い、流れが変わるかもしれない、実に嫌な負け方だった。それでも、このシリーズは7戦目までもつれ込んだものの、最後は4勝3敗でヤクルトが日本一をつかみ取った。

 このヤクルトと西武の2年間の戦いは、日本シリーズ史上屈指の名勝負として語り継がれている。確かに、いま振り返っても壮絶な戦いだった。そしてヤクルトが日本一になったことでデータ野球が脚光を浴びた。

 だが、私はこのシリーズに関しては選手たちの能力で勝ったと思っている。もちろん、データは揃っていたし、選手たちにも相手選手の傾向は伝えていた。でも、それを使うか使わないかは選手自身の判断に任せていた。当時のヤクルトの選手は、データを把握しながらも、同時に直感も大事にしていた。だから、勝負どころで想像を超えたビッグプレーが生まれたのだろう。

 特に日本シリーズのような短期決戦は、データを超えた野球ができるかどうか。そこが日本一の分岐点になるような気がしてならない。

(つづく)

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