明かされる日本シリーズ秘話。野村「ID野球」の陰に仰木監督の友情 (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Kyodo News

 これをどう使うのかというと、たとえば工藤公康が近鉄の主砲・ブライアントに対しての配球だ。当時ヤクルトにはハウエルという左の強打者がいた。もちろんブライアントと同じ配球をしてくるとは考えにくいが、参考にはなる。

 具体的に挙げるとこうなる。カウントは0-0に始まって、3-2まで12通りある。そのうち0-0を含めて、打者有利なカウントは1-0、2-0、2-1、3-1の5つ(このときウェイティングの確率が高い3-0は外す)。そしてこの5つのカウントで、それぞれの投手が選択してくる球種をすべて拾い上げ、集計していくのだ。

 このとき仰木さんからもらった西武のデータは、1シーズンだから26試合分。そのうち大差で勝敗がついた試合は外す。これは、僅差の試合でないと"本当の配球傾向"がわからないからだ。それに大差になると主力を外すこともある。そうすると、データとしてチェックする価値があるのは15~16試合程度。そこからデータを集めることになる。

 その上で大事にしていたのが、"得点圏に走者を置いたときの傾向"だった。たとえば、二塁にランナーを置いた状況でカウントは2-0。ここで石井丈裕はどんな球種を選択しているのか。工藤公康なら......、渡辺久信なら......といった具合に、それぞれ調べていく。当然、アウトカウントによっても変わってくる。考えられるすべてのパターンを洗い出し、そこから相手の傾向を読む。もちろん、スコアラーが偵察で集めてきたデータとも照らし合わせ、それらを総合するわけだ。

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る