ドラフト1位の苦悩。期待の大型内野手が「打ち方を忘れた」状態とは (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

──1997年ドラフト会議で、渡辺さんは千葉ロッテマリーンズから1位指名を受けましたね。

渡辺 めっちゃうれしかったのですが、当時は「ドラフト1位でしかプロには行かへん」というくらいの気持ちもありました。「当然1位やろう」と。

──マリーンズが即戦力の大学、社会人選手よりも高校生の渡辺さんを選んだのは、将来性を買ったからでしょう。二軍でじっくり鍛えあげ、数年後に一軍に上げるというプランだったと思います。高校を卒業したばかりの渡辺さんにとって、プロ野球のレベルをどう感じましたか?

渡辺 思っていたよりもすごい世界でした。守備ではプロの打球の速さに戸惑うことはなかったのですが、打撃はまったく通用しなかった。プロ1年目には、二軍で1試合5三振をしたこともあります。高校生とは、ピッチャーのスピードが違いました。ストレートもそうですし、変化球のスピードもキレも。キロ数表示以上に、ボールの質の高さに驚きました。

「とらえた!」と思っても全部空振り。ストレートがくるとわかっていて、それに合わせて振っているのにバットはボールの下を通る。全然、当たりませんでした。「二軍でこれなら、一軍のピッチャーはどんなボールを投げるんだろう」と思いました。

 1年目に鼻をポキッと折られて、最後までそのまま。プロ野球で15年間プレーさせてもらいましたが、バッティングでもがいて、もがいて......苦しくて、苦しくて......最後まで自分で納得するバッティングはできませんでした。

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