ドラフト1位の引き際。あの豪腕投手は、なぜ27歳で引退を決めたのか (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News


――試行錯誤の末に、自分の投球を取り戻したのですね。

増渕 原点を忘れてはいけないということですね。コーチはその選手が少しでもよくなるように足りない部分を指摘してくれるわけですが、自分のことは自分が大事にしないと。セールスポイントをなくしてまで意見を受け入れる意味があるのかどうか、しっかり考えないといけない。もしかしたら、僕は人の意見を聞きすぎたのかもしれません。でも、うまくいかなかったのはコーチのせいではなくて、自分が自分を見失っていたからです。

――2011年は再び先発に回って前半だけで5勝をマーク、7勝11敗、防御率4.22という成績を残しました。

増渕 2011年はスワローズが本当に優勝できるかも、というシーズンでした。僕がもう1勝していれば......。1試合1試合が大切なんだと改めて実感しました。負けた試合のどれかでもっと踏ん張っていれば、優勝できたんじゃないかと思います。

――2012年は再び中継ぎに回り(先発は5試合)、2勝7敗8ホールド、防御率は5.38でした。しかし、翌年あたりから、増渕さんは精彩を欠くようになります。原因は何だったのでしょうか?

増渕 また自分のピッチングを勝手に小さくしてしまっていたと思います。何が正解なのかわからず、悩みました。僕はコーチに相談するタイプだし、先輩にも『どうすればいいですか』とよく聞いていました。プロの世界ではまわりの意見を聞かない人がたくさんいますし、そういう選手のほうが活躍しているような気がします。でも、僕はそうではありませんでした。

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