エースとは何か? 菊池×則本の
投げ合いで蘇った「11年前の対決」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

 則本をマウンドから引きずりおろした時点で7点差がついており、ライオンズの首脳陣は先を見据えて、菊池に交代のタイミングを打診した。しかし、菊池は続投を願い出た。

「7点目が入った4回からは、あまり考えてもよくないとは思いながら、明日以降につながるピッチングができればなと思ってました。というのは、明日の先発の十亀(剣)さんは投げ方が僕とは真逆ですから、なるべく僕が投げれば、明日、角度が変わることになっていいのかなと思ったり......だから代わるかと相談されたんですけど、最後までかせてくださいと言いました」

 左のオーバーハンドの菊池が最後まで投げ続ければ、イーグルスの打線が翌日の先発、右のサイドハンドの十亀に目が馴れず、思うように対処できなくなるのではないかという菊池は、だから点差が開いても投げ続けた。菊池はイーグルス打線に一度として連打を許さず、ヒット5本、9つの三振を奪って、CS初登板を見事、完封で飾ってみせたのである。試合後、菊池はこう言った。

「(則本に)気持ちで負けないようにと思って投げてました。こっちが少しでもスキを見せれば、絶対、ギアを上げてくるので、点差が開いても絶対に(相手が)いけるかもしれないというスキを見せたくないと思ってました。シーズン中から、本もヒットを打たれたくない、絶対に勝つと思ってやってますし、(CSだからといって)何も変わるところはなく、緊張もせず、むしろワクワクしながら投げられました」

6 / 7

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る