経験者が明かす「優勝チームがCSまでに
試合勘が鈍る」という状態

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 ティーバッティングというのは、自分の打撃フォームが狂っていないか、チェックするのに最も効果的な練習法である。自分本来のタイミング、ポイントでボールを捉えているか。軸足にしっかり体重を乗せているか。体の開きは早くないか。下半身がしっかり使えているかなど、そうしたチェックにうってつけの練習法といえる。

 また、ボールをトスしてもらうときも、ただ漠然とストライクゾーンに投げてもらっているわけではない。最低でも、内角高め、内角低め、外角高め、外角低めの4カ所を投げ分けている。そこで自分のバッティングを再確認するわけだが、少しでも調子が悪くなったり、タイミングが取りづらいなと思ったらティーバッティングをすればいいと思う。派手な練習ではないが、実に理にかなった練習法である。

 少し話が逸れるが、ヤクルトの(山田)哲人は10種類以上のティーバッティングをしてチェックしているという。それだけ自分のフォームの細微な狂いに敏感になるのは悪いことではない。哲人の場合、WBCではそれができなかったらしい。

 練習環境の違いはもちろんだが、普段は杉村(繁)コーチが付きっきりで相手をしてくれており、それと同じボールを投げられる人が代表にはいなかった。WBCで哲人が自分のバッティングができなかった理由のひとつに、ティーバッティングもあったと思う。

 それほど大事な練習方法だが、すべての選手がそのことを自覚しているわけではない。なかには、フリーバッティングまでの時間つぶしの選手もいる。言い換えれば、そうした練習ひとつとっても選手の意識次第で効果はまるで違うのだ。もちろん、それだけで"打撃勘"を取り戻せるわけでないが、意識の差は大きい。

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