経験者が明かす「優勝チームがCSまでに試合勘が鈍る」という状態 (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 これまで私もコーチとしてCSや日本シリーズを経験してきたが、試合が始まるまでの調整は本当に難しい。

 まず厄介なのが、選手の気の緩みだ。今でも忘れられない苦い思い出がある。2001年に近鉄(現・オリックス)が12年ぶりにリーグ制覇を達成したときだ。リーグ優勝が決まり、約1カ月後に日本シリーズが始まるだが、選手たちは戦う前から集中力に欠けていた。久しぶりの優勝ということもあったのだろう、リーグ制覇した時点で選手たちは満足してしまっていたように思う。選手たちの緊張感や集中力は、いくら首脳陣がったところでどうすることもできない。気持ちのコントロールは選手に任せるしかない。

 試合が近づけば、スコアラーからのデータも集まり、ミーティングが始まる。2001年の日本シリーズの相手はヤクルトで、我々はキャッチャーである古田敦也のリードをかなり警戒していた。当然、かなりのデータも収集していたし、選手たちにも「勉強を始めておけ」とかなり早い段階からっていた。しかし、ノリ(中村紀洋)だったか「伊勢さん、戦う相手は古田じゃなくて投手ですよ」と言って、あまり身を入れてデータを見直さない選手もいた。「これでは勝てん」と思ったが、案の定、敵地で3連敗するなど1勝4敗であっさりと敗れた。

 そうした気の緩みとは別に、打者の場合、試合が遠ざかることで感覚が鈍り、調子を取り戻せない選手も多いと聞く。前述した巨人などは、まさに打者の感覚が戻りきらず敗退した例といえる。その感覚とは、そもそもいかなるものなのか。そしてその対策はないのだろうか。

 試合が遠ざかったときに言われる"感覚"というのは、投球への反応といったものではなく、いわゆる"試合勘"を意味している。言葉で表現するのはすごく難しいのだが、我々経験者の言い方を許してもらえれば「試合に入れる、入れない」というやつだ。

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