石井琢朗コーチが感謝する、「新井さん」が放ったチャンスでの凡打 (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 昨春キャンプの実戦練習、紅白戦からオープン戦にかけて、選手が攻撃時に「7割の失敗」を生かした場合、石井はしっかりと評価することにした。広島には石井のほかに東出輝裕、迎祐一郎と2人の打撃コーチがいるが、その2人に対しても、ひとつの凡打を評価するよう求めた。

 試合中のベンチ内。コーチがワンプレーを評価すれば、選手も手を叩くようになる。たとえば、無死満塁の場面で併殺打でも、その間に1点が入るから「ナイスバッティング!」。犠牲フライで1点でも「ナイスバッティング!」。ビッグチャンスで1点しか取れなかった......とは考えない。たとえ点が入らなくても、ひとつの凡打でランナーが進めば、それだけでベンチが盛り上げるよう仕向けた。

 近年、送りバントを決めた選手を拍手で迎えるシーンは、プロ野球でも珍しくなくなっている。しかし球界OBのなかには、「バントひとつでなにを喜んでいるんだ!」と苦言を呈す御仁もいる。送りバント以上に目立たない、凡打による進塁を評価するのは相当に難しかったのではないか。

「確かに、今まではそういう流れでした。でも、その進塁打がきっかけで1点が入って、イチゼロ(1対0)で勝つかもしれない。1点が入るなら、グシャッという当たりのボテボテの内野ゴロでもいいんだと。実際、それですごく印象に残っているのが、去年のゲームなんですけど、8月のマツダスタジアム、佳境を迎えた2位ジャイアンツとの3連戦でした。2連敗して、ここで負けたら2位とのゲーム差が3.5になるという試合です」

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