名コーチが伝授。短期決戦のCSでやるべきこと、やってはダメなこと (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Kyodo News

 ただそれは、あくまでシーズン中の戦い方であって、短期決戦で使うような手ではない。こうした場面こそ手堅く、送りバントで走者を進めるべきなのだ。

 短期決戦での奇策は、必ずといっていいほど失敗する。それはなぜか? 短期決戦では選手がシーズンとは別人のように気持ちが入りすぎている場合が多い。そんな選手に普段と違うことをさせようとすれば、より力んで体が動かなくなってしまうからだ。そしてその失敗が、わずか数試合の命運を大きく左右してしまうことがある。

 シーズンと違い、短期決戦はミスをすると簡単に取り返せない。シーズンは3試合1カードで、もし1勝2敗で負け越したとしても次のカードで勝ち越せば五分に戻せる。しかし短期決戦での1敗は極めて大きなダメージとなる。よく"1球の重み"がまるで違うというが、それはそうした走者を進塁させられるかどうかといった場面でつくづく感じることだ。

 "1球の重み"は投手も同様だ。たとえば配球でいうなら、内角に1球見せておいて、次の外角の球で勝負する、というのが基本だとする。しかし、この内角への1球が甘く入って痛打を食らってしまえば、取り返しのつかないことになってしまう。そのため、より慎重な配球となり、外角中心の配球になる。こうした短期決戦では、「外角低めにきっちり投げられる投手」がベンチとしては最も心強く、使いたくなるタイプの投手といえる。

 たとえエースが落ちるボールを得意としていても、ベンチとしては高めに抜けるコントロールミスが怖くてならない。それが本音だ。それよりも手堅く外角低めに制球できる投手こそ、短期決戦ではありがたい。150キロのスピードはなくても、捕手の構えたところに投げることができたら、まず長打は食らわないだろうし、連打もないだろう。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る