貧打を変えた石井琢朗コーチの教え。カープ打線は7割の失敗を生かす (3ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • 西田泰輔●写真 photo by Nisida Taisuke

「バットマンとして、目指すところは3割という数字。その3割を100点と考えた場合、自分のスキルを上げる練習では100点を目指しなさい。当然、試合でも100点を目指すけれど、試合は"試し合い"と書く字のとおり、練習で取り組んだものを試し、できなければまた練習という繰り返しになる。ただ、試合はゲームでもあり、相手より1点でも多く取れば勝ち。じゃあ、点を取るためにどうすればいいかと考えるとき、漠然と3割という100点を目指さないでほしい。3割だけで1点を取りにいくんじゃなくて、残りの7割の失敗も生かしてプラスして、10割を使って攻撃してほしい。ひとつの凡打、失敗でも、いかにランナーを進めるか、得点にするかというところから考えなさい」

 失敗も生かして、10割を使って、成功に近づく――。野球以外のスポーツ、もしくはビジネスにおいても当てはまりそうな考え方だ。そもそも「野球は失敗のスポーツ」といわれる。石井の考え方に基づけば、「野球は失敗を生かすべきスポーツ」と言い換えることができるだろう。ただし、守備の失敗は逆に1点を取られて負けに直結することもあるため、この場合、攻撃上の失敗に限られるわけだが、こうも考えられる。チャンスでの打席、凡打でもいいんだと思えば、楽な気持ちで入れるのではないか。

「気持ち的には楽になると思います。僕は現役のときにそうだったので......。しかも、結果はひとつですけど、状況に応じて過程はいろいろ、方法もたくさんあります。それこそが打席で自信を持てる根拠だと思うんだけど、方法のなかでどれを選択するかは選手次第。内野ゴロでもランナーを進めるのか、犠牲フライを打つのか。あるいは後付でもいいんです。打ち損じが凡打になっちゃって、たまたまランナーが三塁に進んだ。それで三塁ランナーがエラーで還ってきて決勝点になったら、ナイスバッティングなんです。後付けなんだけど、後付けでも全然問題ない。僕はいいと思うんです」

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