お前が打たなきゃ誰かが打つ。カープ黄金期を予感させる圧倒的な選手層 (4ページ目)

  • 大久保泰伸●文 text by Ohkubo Yasunobu
  • photo by Kyodo News

 また、首位攻防戦となった9月5日からの阪神3連戦は、初戦を安部のサヨナラ2ランでマジック12を点灯させると、2戦目は延長戦でサヨナラ勝ちし、3戦目も安部の逆転打で事実上、リーグ連覇を確実なものとした。

「優勝するチームは、連敗は4まで」とは、90年代にヤクルト黄金期を築いた名将・野村克也氏の言葉だが、今季の広島はそれを実践した。4月と5月に4連敗を一度ずつ記録したが、交流戦以降は一度もなし。

 ダメージが残りそうな連敗を喫しても引きずらなかったのは、緒方監督をはじめとして、新井やタナキクマル(田中広輔、菊池涼介、丸佳浩)らの主力が呪文のように口にしてきた「一戦一線を戦うだけ」の信念を貫いたからだ。

 9点差を逆転された阪神戦の試合後、リリーフで打たれた中田は「もう試合は終わった。次に向けて必死で準備する」と悔しさをにじませながらも前を向いた。DeNA戦のサヨナラ3連敗の後には緒方監督が「やっている野球は続けていくし、変えるつもりはない」とコメントした

 優勝マジックは点灯と消滅を繰り返したが、一喜一憂することなく、目の前の試合に全力を尽くした。1日1日の積み重ねが、いつの間にか頂点へとつながっていく――そうした昨年から変わらない姿勢が、37年ぶりの連覇へとつながったのだ。

 紆余曲折を経て頂点へと上り詰めたチームの次なる目標は、昨年成し遂げられなかった日本一しかない。

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