岩隈、田中、則本──。楽天「エースの系譜」を藤平尚真は継承できるか (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 そのときチームは2連敗中。負のスパイラルにチームが陥ることを阻止したい。自分の欲望だけでチームに迷惑をかけたくない。そんな藤平の思いが伝わってくるような、精神年齢の高いピッチングだった。

 150キロを投げられる18歳が、思い出の地・甲子園で迎えたプロデビュー戦。「いいところを見せてやろう」とならないわけがない。たぎる思いは、間違いなくあったはずだ。しかし、その炎を"内燃"させたのが、藤平のすごさでもある。

 試合の後、楽天の星野仙一球団副会長は、「もっと荒々しいピッチングをしなくてはいけない。50点!」という談話を残したという。

 星野副会長が言うように"若武者"らしいピッチングを見たかった反面、この日のピッチングに藤平という投手の"奥行き"を見たような気がした。

 失点は原口文仁に食らった左中間の2ラン。毎回ランナーを許したのだから、「打たせてとった......」とは言えないピッチング。その代わり、打たれながらもしのいだという言い方はできるだろう。生命線のひとつであるはずの"奪三振"はゼロだったが、なんとか試合をつくってみせた。そんな"静かな船出"に、藤平という新鋭の器の大きさをあらためて実感した。

 ルーキーにとっての晴れ舞台であるフレッシュ・オールスターで、藤平がどんなピッチングを見せてくれるのか注目だ。そのピッチング如何では、藤平が後半戦のカギを握る男になるだろう。

 岩隈久志から始まった楽天のエースの系譜は、田中将大、則本昂大と受け継がれている。荒々しさのなかに、うまさを兼ね備えた彼らのピッチングを、藤平は継承することができるだろうか。

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