カープ新守護神・今村猛。「中継ぎキャプテン」の責任感は変わらない (2ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 投手として、先発への思いは当然ある。だが、それ以上に"求められる場所"こそ、自分の生きる場所だと信じて投げてきた。

「チームに必要とされれば、それでいい。先発陣が揃っているのなら、足りない中継ぎで投げればいい」

 入団2年目、20歳になったばかりの頃から、チームのことを第一に考えられる芯の強さがあった。

 キレのある球に、強心臓、なにより疲れを見せないタフネスぶりは、中継ぎというポジションで最大限に力を発揮した。若くしてセットアッパーの座に就き、抑え不在時には代役も務めた。2年目の2011年から54試合、69試合、57試合と3年連続50試合以上に登板。前述のように、2013年には日本代表としてWBCにも出場している。

 下支えする役割を担い、自身も意気に感じて投げてきた。次第に体に歪(ひず)みがきていることは感じていたが、それでもチームのために投げ続けた。そして、気がつけば無理がきかなくなっていた。

 右打者の外角低めに伸びるように決まっていたストレートのキレが落ちてきた。生命線であるストレートの精度悪化は、投球を苦しくした。

 投球内容は残酷なまでにはっきりと数字に表れている。2014年は17試合、2015年は21試合の登板にとどまり、二軍で過ごす時間が増えた。

「体が以前と違う。前と同じような投球をしようとしてもできない。今の体の状態でできることを考えていかないといけない」

 ジレンマは募る。たとえ投球内容が良化しても、周囲は以前の今村と比較する。フル回転していたときの自身の残像が、苦しみを深くした一因にもなった。

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