名打撃コーチが言う。「広島と阪神のバッターには決定的な差がある」 (4ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 このふたりに限らず、阪神の選手、特に若手には広島の選手たちと比べて大きな差を感じてしまった。打ちにいくのはいいが、それならせめてもっとしっかりしたスイングをしてほしいものだ。どんな練習をしているのか、疑問に思ってしまう。

《広島といえば、かつてはキャンプからトスやティー打撃と言われる練習で他チームと大きな違いがあった。たとえば、野村謙二郎、江藤智、前田智徳らが主力の時代。彼らが率先して、まるでボールを叩きつぶすのではないかと思うほどのスイングでネットに突き刺していた。その練習だけで足がフラフラになる光景は、カープの名物となっていた》

 私も広島には阿南準郎監督時代の2年間(1987~88年)、打撃コーチとしてお世話になった。高橋慶彦や正田耕三、小早川毅彦らが主力で活躍していた時代だ。

 その当時の広島の選手がバットを振る量たるや、他球団とは比べものにならないほど多かった。なかでも凄かったのが高橋慶彦だ。全体練習終了後、彼につかまると1000球ぐらい打ち込みの相手をさせられる。そうなると夜まで何もできない(笑)。とにかく「バットを振りすぎて死んだ者はおらん」というのが、当時の広島にはあった。その"伝統"は、スイングの量こそ多少は減ったかもしれないが、今もしっかりと受け継がれている。

 その象徴的な選手が鈴木誠也だ。6月27日の試合で、鈴木は初回に外角球を引っかける形で三遊間にゴロを放った。たまたま飛んだコースがよくレフト前にヒットになったが、次の2打席目も同じようなバッティングで、今度はショートゴロに倒れてしまった。このときの鈴木の悔しがり方はハンパなかった。

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