追悼・森慎二コーチ。4月に語っていた
「腕がとれた!」悪夢の故障

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Thomas Anderson/アフロ

──メジャーリーグのボールは、日本とは大きさも手触りも異なります。マウンドはコンクリートのように硬い。当然、気候も全然違います。もちろん、言語やトレーニング方法も。

「そうですね。日本と違うところはたくさんありました。でも、ボールの違いもマウンドの硬さにも、すぐに対応できました。日本だとリリーフでマウンドに上がるときにはボコッと掘れていることが多くて、リリーフ投手としては投げにくいときもありましたが、アメリカではその心配がありませんでした。やりにくさを感じたのは、投球練習の球数が制限されていたことくらい。それも、練習後に遠投を増やすことで不安は解消できました」

──気候についてはいかがでしたか。

「春季キャンプはフロリダで行なわれたのですが、太陽が出ているときは乾燥しやすいなと感じたものの、暖かいので汗も出て、僕にとってはやりやすかった」

──ところがキャンプ中から右肩に違和感があり、何度かオープン戦の登板を回避しました。そして開幕を控えた3月20日、森さんはついにオープン戦のマウンドに上がりました。

「結果的には、もっと慎重にやればよかった。あのとき、投げなければよかった。原因はひとつではなかったのですが、どれかひとつでも取り除くことができれば、あんなことは起こらなかったと思います。

その前に違和感があったときに、軽い肩の肉離れをしていたのかもしれません。でも自分では『大丈夫、投げられそうだ』と思ったので、マウンドに上がりました」

──3球目を投げた瞬間、マウンドでうずくまってしまいました。

「ボールを離す直前に、肩がポコッと外れてしまいました。超合金ロボットのおもちゃの部品が壊れるみたいに。『あっ、右腕がとれた......』と思いました。正確には後ろに外れたのですが、自分としては『腕が飛んだ』ように感じました」

──そのとき、何を思いましたか。

「これは『もう終わったな』と......二度とボールは投げられないと」

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