DeNA宮﨑敏郎が自ら語る、熱い野球愛と「言葉にできない打撃術」 (4ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by Kyodo News

 この時期の宮﨑のプレーで忘れられないシーンがある。2年目の2014年4月に行なわれた阪神戦での出来事だ。

ファームから昇格したばかりの宮﨑はセカンドを守っていた。9回表無死一塁の場面、バントに対し宮﨑は一塁ベースのカバーに入ったが、捕球したピッチャーが二塁に投げると思い込み目線を切ったため、自分に向かって投げられたボールを逸(そ)らしてしまう。このとき呆然と立ち尽くす宮﨑の姿を覚えているファンも少なくはないだろう。中畑清前監督はこのプレーに対して「野球の世界にないボーンヘッド」と酷評し、宮﨑は昇格からわずか2日で登録抹消されてしまう。

「正直、僕の野球人生はこれで終わったと思いました。かなり落ち込みましたし、これでもうチャンスはなくなるんだろうなと......。まあ、今だから言えますけど、あのプレーで少し名前は知ってもらえたなって」

 そう言うと宮﨑はいたずらっ子のように笑ったが、すぐさま表情を引き締めた。

「ただ、下を向いていてもしょうがない。これで終わったら後悔するし、納得がいかない」

 失敗から学ぶのもその選手の才覚であるが、宮﨑は決して腐ることなく練習に励み、首脳陣の信頼を回復していく。守備に対する意識は、それまで以上に高まった。

「いろんなポジションを守らせてもらっていますが、守備は判断力も含めプロの世界は難しいと思います。深いし、見ている人にはわからない部分も多くある。万永コーチからも厳しく言われたこともありますが、それが今、結果になってきているのかなって......」

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