時空を超えて現れた「昭和のスラッガー」DeNA宮﨑敏郎の正体 (4ページ目)

  • 山口愛愛●文 text by Yamaguchi Aiai
  • photo by Jiji photo

 宮﨑のバッティング練習を見ていると気づくことがある。フリーバッティングのケージに入る前にはバット3本を持ち、腰を落として左右に大きく振る。今シーズン、左外腹筋を傷めて開幕に出遅れた影響があり、念入りに脇腹をストレッチして負荷をかけてからフリーバッティングに臨んでいる。バット3本を振り回しても遠心力に動じない体幹の強さにも目を見張る。2つ並んだケージの右側に入り、打つこと30本。センター方向に飛んだ打球はわずか3球。レフト方向に9本、ライト方向に18本を打ち込んだ。左のケージに入ると今度はほとんどの球をレフト方向に打ち込んだ。

「しっかり自分の形で振れればいいのでバッティングに関して特に細かいことは言わないが、右のケージで打つときにはライト方向、左のケージのときにはレフト方向を意識するように伝えています」と小川コーチ。「中途半端にスイングして、センター方向に無理に打つ必要はない。右か左に分けようと。そういうリズムのルーティンでバッティング練習をしています」。フォームには修正をかけず、打つ方向だけ意識させ、思い切り打たせるバッティング練習が試合で生きていた。

 これだけのセンスと技術がありながら、昨年まではなかなかレギュラー定着とまではいかなかった宮﨑。デビュー年の2013年も春季キャンプで左外腹筋を痛め、期待されていた開幕一軍入りを逃した。しかし、イースタンリーグの試合では4月に3試合連続ホームランを打つなど才能の片鱗をのぞかせていた。翌年には一軍での初出場を果たすも、ファーストベースカバーの際に送球から目を離すボーンヘッドを犯し、わずか2日で二軍へ降格してしまう。 

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