「モレルは打てる」。田口壮二軍監督がそう信じた米教育リーグの教訓 (2ページ目)

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 田口は3年契約どころか、結局カージナルスでの6年を含め、メジャーで8年間を過ごした。その間、ワールドシリーズを2度制覇するなど、選手として絶頂期を迎えた。そうした栄誉も32歳のときに教育リーグに行っていなければ、すべてなかったと田口は言う。

 今年、田口は48歳になる。指導者として2年目を迎えたが、あらためて15年前の経験が生きていると語る。

「同じことが日本に来た外国人選手にも当てはまるんです。いきなり日本の野球に対応する選手もいますが、ほとんどの選手は壁にぶち当たります。オープン戦とかはうまくいっても、シーズンに入ったら研究されてしまって、なかなか結果を出せない。近年は1年目で成績を残せなかったら翌年の契約をしてもらえない傾向にあるので、正直、厳しいと思います。もちろん、なかには日本の野球をなめている選手もいます。そういう選手が結果を出せずに1年でクビになるのは仕方ありません。でも、一生懸命で、技術はあるのにアジャストするまでに苦労する選手がいます。そうした選手が1年でクビになるのは、かわいそうだと思いますね」

 ここでブレント・モレルの話になった。モレルは昨年、助っ人としてピッツバーグ・パイレーツからオリックスに入団するも、なかなか結果を出せず、一軍と二軍を往復していた。そのため、田口は3度も指導することになった。

 結局、一軍では94試合に出場し、打率.244、8本塁打、38打点で、三振は88個を喫した。成績だけを見れば、解雇されてもおかしくない数字だ。それでもシーズン終了後、次々と外国人選手が解雇されるなか、モレルは残留が決まった。田口はホッとしたという。

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