菊池雄星が語った絶対的エースへの道。8年目の快投を自ら分析する (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「『左ピッチャーがいない』と言われたなかで選ばれていないのは、信用がないということですから、悔しさはあります。でも、今年は岸さん(孝之/楽天)が抜けて、僕が本当にやらないとライオンズは勝てない......と思っていたので、すぐに切り替えました。まず、開幕に合わせること。課題はたくさんあるので、正直言って『それどころじゃない』というのが本心でした」

 菊池の課題、それは言うまでもなくコントロールだった。160キロに迫るストレートは、しっかりと指に掛かったら誰もとらえられないようなキレと迫力がある。だが、これまでは試合中に球筋が暴れて制御が効かなくなるシーンも多く見られた。

 気になっていたのは、菊池の類まれな「柔軟性」が制球難の一因になっていたのではないか、ということだ。菊池は手のひらを合わせた状態で、両腕をぐるりと背中から尻まで回すことができる。また、両足を180度開いて力士のように股割りすることもお手の物。この肩甲骨、股関節の柔らかさが菊池の投球に力を与えていることは間違いない。その反面、可動域が広いがゆえに制御するのが難しくなるのだ。

「自分でコントロールできるなかでの柔らかさは大事だと思います。でも、やみくもに可動域を広げても、自分の感覚のなかでコントロールできなければ意味がありません。『ここだ!』というタイミングで筋肉を発火できないといけません」

 自身の肉体をコントロールするには、どうすればいいのか。そこで冒頭に記したような「意識と無意識」のバランスがポイントになってくる。

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