高橋由伸監督に欠ける危機管理能力。名コーチが目配りの必要性を諭す (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 栗山監督とは対照的に、由伸監督は巨人のスーパースターだった。私も2年ほどだが、巨人に在籍した経験があり、チームの空気は知っているつもりだ。彼の現役時代は、ほかの若い選手が気安く話しかけられる存在ではなかった。もう10年以上も前のことだが、由伸監督の話し相手といったら二岡(智宏)など、限られた選手だけ。

 まだ、現役のときは自分のことで精一杯だから、それでもいい。でも、そのまま監督になってしまうと、なかなか人の意見を聞く姿勢みたいなものができない。そうなると孤立してしまう。

 彼は現役を引退して、充電期間もコーチ経験もないまま監督になってしまった。チーム事情もあったのだろう。その部分については、気の毒な面もある。しかし、監督となった以上、チームを勝たせることが最優先であり、そのためには自分を変える必要がある。

 その点、(阿部)慎之助なんかは、ほかの選手の打撃を見てはアドバイスをしている。キャンプ中なんて、マンツーマンで小林(誠司)にキャッチャーのイロハを叩き込んでいたけど、チーム事情とはいえ一選手の仕事の領域をはるかに超えている。

 でも、教えることで選手と接し、そこで初めてその選手の性格とか、力量がわかってくる。コーチ経験が必要と言われるのは、単に技術の教え方などを勉強するというのではなく、接することで選手の内面がわかることが大きいのだ。

コーチとして指導するなかで、選手の性格のみならず、限界や伸びしろまでも感じられるようになる。そして監督になったとき、選手の性格も能力も把握していれば、いざ試合になっても迷うことなく起用できるようになるという。

 打撃コーチなら、二軍でも16人ぐらいの選手を指導しなければならない。毎日毎日、日に焼けながら練習に付き合っていれば、技術はもちろん、性格も自分の子ども以上に詳しくなってくるものだ(笑)。

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