なぜ藤浪晋太郎のボールは荒れるのか?
暴れるメカニズムを分析

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 そしてもうひとつ、今年の藤浪を語る上で外せないのが体の変化だ。球団発表では、体重は昨年と同じ89キロとなっているが、そもそも昨シーズン中も90キロ超えをキープしていたと聞く。

 オフはダルビッシュ有とのトレーニングも話題になったが、徹底した筋トレ、食事管理で体重増に取り組み、昨年12月末の時点で97キロと告白していた。現在の体重は不明だが、体の厚みは間違いなく昨年よりも増している。

 体のパワーが増せば、上半身と下半身の回転運動の速度も、さらに腕の振りの速度も上がりやすくなる。そうなると遠心力が大きくなり、リリース時に腕が体から離れやすくなることも考えられる。

 そもそも藤浪は、高校時代からフォームについて語るとき、「腕が軸に巻きつくように」というフレーズを口癖のように言っていた。少しでも気を許せば、長い右腕が体から離れ、ボールの質にも制球力にも影響が出ることを誰よりも感じていたからだ。

 昨年9月の試合で自己最速の160キロを記録し、先のヤクルト戦でも見るからに力感のないフォームから150キロ台のボールを常時投げていた。出力をアップし、さらなるスケールアップを目指した結果、ばらつきが生まれてしまったのだろう。

 阪神、オリックスでコーチを務め、スカウト経験も豊富な山口高志氏と以前、プロ野球界で言われている"2年目のジンクス"について話したことがあった。そのときの山口氏の言葉を思い出す。

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