「150キロを投げた自分はもういない」。元西武・森慎二が語る大ケガ (4ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

──その間、「オレはこんなピッチャーじゃないのに」「もっといいボールが投げられるはずだ」とは思いませんでしたか。昔は154キロを記録するほどの快速球投手だったのに、と。

「いいえ、以前の自分とはもう別物だと認識していました。はじめは肩を脱臼する前に戻ろうと思っていたのですが、2、3年経つうちに、『どういうピッチャーを目指そうか』と考えが変わりました。だから、サイドスローで投げたこともあります。どうすれば生きたボールに見えるのかを考え続けました。いまの自分の力でバッターをいかに抑えるか。幸い、肩以外はどこも悪くなかったので、トレーニングを続けることができました。

──しかし、完全復活することはできませんでした。

「最後の年の夏過ぎ、思い切って投げたときに、また肩が痛くなりました。指導者をしながらリハビリを続けていたのですが、ある日、練習中に内野手みたいにボールを横から投げた瞬間に、また肩がゴリッとなって......『こんなことができないようではダメだな』と思い、引退を決めました。

 独立リーグで投げることが最終目標ではありませんでした。ピッチャーとして、どこかの国でプレーヤーとして契約したかった。そこから少しずつレベルを上げて、ステップアップしたいと考えていました。後悔も『やり切った!』という思いもなかったのですが、自分から『やめよう』という感情になったことは寂しかったですね」

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