「150キロを投げた自分はもういない」。
元西武・森慎二が語る大ケガ

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

──ドクターはどのくらいで治るという診断だったのでしょうか。

「全治1年です。MRIで内部の損傷を見て、手術なしでも大丈夫とのことだったので、そのままリハビリをすることになりました。あとから考えると、手術をしたほうがよかったのかもしれない。MLBではピッチャーの脱臼は初めてだったそうです。

 半年くらい経てば、遠投で70~80メートルは投げられるだろうと言われました。デビルレイズとは2年契約を結んでいたので、1年目にリハビリをすれば翌年投げられるはずでした。だから、来年にかけようと」

──メジャーのマウンドがすぐそこにあっただけに、無念だったでしょうね。その後はドクターの見立て通りに回復しましたか。

「時間はかかりました。でも、リハビリがつらいとか嫌だとかは思いませんでした。本当につらかったのは、キャッチボールを始める前くらいかな。ボールに触れるまでは、『どうしてこうなったのかな』という後悔ばかり。野球をやっていない時期は、どうしてもそう考えてしまいました。でも、少し投げられるようになってからは、少しずつ前向きになっていきました。

 3カ月後くらいに投げられるようになって、野球ができる喜びを感じました。投げるっていっても、ほんの5メートルくらいでしたが。それまでは日常生活にも支障があって、顔も洗えず、歯も磨くことができず、寝ているときにタオルケットを持ち上げようとしたら肩が抜けそうになるから、それも無理。全部を左手でやっていました。でも、投げられるようになってからが長かった......というか、最後まで自分が思うようには投げられなかった。

 アメリカでリハビリしているときは、110キロくらいのボールは投げられるようになりましたが、投げ方は初心者みたい。ピッチャーだと言えるようなフォームではありませんでした」

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