WBCは小林誠司のためにあったのか。驚きと感動の好プレー7試合 (2ページ目)

  • 菊地高広●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 1次ラウンドのオーストラリア戦では、リリーフの岡田俊哉が突然制球を乱し、ストライクがまったく入らなくなるシーンがあった。すると、小林は絶妙のタイミングでマウンドに歩み寄って岡田に声を掛け、その直後に併殺打でピンチを切り抜けた。試合後、小久保裕紀監督は「今日の小林の声掛けは最高やったな」と手放しで絶賛した。

 とはいえ、リードの部分は小林ひとりの手柄ではなく、大野奨太、炭谷銀仁朗を含めた捕手陣の連携の賜物でもある。2次ラウンドのイスラエル戦後、守護神の牧田和久が打ち込まれたシーンについて問われた小林は、こんなことを述べていた。

「左が結構並んでいたので、そのへんでもう一度牧田さんと話し合って、あとは銀仁朗さんにもいろいろと話を聞きながらやっていきたいと思います」

 自分よりも経験のある捕手から献身的なアドバイスをもらえる──。こんなに心強いことはないだろう。控え捕手として小林をサポートする大野は、1次ラウンド・中国戦の試合後にこんなことを語っていた。

「誰が試合に出てもいいんです。僕も銀仁朗も誠司を助けられることがあればやっていきたいと思うし、キャッチャーにしかわからない部分も多いので。それを3人で協力しながらやっていけたらいいなと思っています」

 当初は期待値の低かった打撃についても、小林が打席に入るたびに場内からの歓声が大きくなっていった。ファンも「次はどんなことが起きるのか?」と期待しているフシがあった。中国戦では貴重な2ラン本塁打、強敵・オランダ戦では一時勝ち越しとなるタイムリー安打、続くキューバ戦、イスラエル戦でもタイムリーを放った。

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