全治1年からの帰還。DeNA山崎憲晴ロングインタビューby村瀬秀信 (2ページ目)

  • 村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu
  • 小池義弘●撮影 photo by Koike Yoshihiro

 守備は万全、バントも巧み、つなぎの打撃ができて、過去在籍していた外国人選手のブランコ、グリエル、バルディリスが内野を守るとなったときにスペイン語を学びコミュニケーションをとる。"チームに足りない箇所"を誰よりも意識し、その穴埋め役に徹することを誇りとする。その結果、当時の中畑清監督から筒香嘉智キャプテン就任の補佐役として副キャプテンに任命されるほどの信頼を得て、2014年には"2番ショート"のレギュラーを掴んだかに思われた憲晴。

 その彼の姿を、この2年間は一軍のグラウンドで見ることがほとんどなかった。2015年の絶不調。その間に、ショートのレギュラーには倉本寿彦が定着した。

 そんなことからも、捲土重来を期し、不退転の決意で挑んだ2016年だった。それがわずか1週間でシーズン絶望という現実。認めたくなかった。

「普通の人は前十字をやるとその場に崩れ落ちるらしいんです。でも......あの時の僕は、人工芝に足が引っかかって膝がグニャってなった後、1回転してからそのまま歩いたんです。頑張って(笑)。やっぱり、勝負の年だと挑んでいましたから、大ケガをしたと思いたくなかったんでしょうね。心の中で『大丈夫、大丈夫』と言い聞かせて......パイプ椅子に座ったら、もう立ち上がれなかったけど」 

 医師の診断は左膝前十字靭帯断裂と内側側副靭帯損傷。憲晴は全治12ヵ月の大ケガを負った。原因のひとつは、前年オフに行なった急激な肉体改造で約10キロを増量したことだろう。実際、キャンプから1週間、常にケガの予感による恐怖がつきまとっていたという。

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