青木宣親が放った1本の「セカンドゴロ」にWBC制覇の可能性を見た (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Getty Images

 菊池の追い込まれたカウントからの右打ち、鈴木誠也のシーズン中にはほとんど見せない犠打、小林の相手投手から球数を引き出す粘り。大会前の実戦では打線がつながらず不安を感じさせたが、大会開幕後は打線として一皮むけた感がある。青木はその実感を語っていた。

「才能のある選手が集まっていることはわかっていました。でも、才能のある選手がいても、チームとして機能するのは難しい。今回はそれがうまくいっていると思います」

 打線が機能し始め、投手陣も役割が確立されつつあり、チームとしての一体感も出てきた。チームがひとつになる。それは青木がもっとも求めていたものだった。

「引き離されてもあきらめない。チームの中にそんな雰囲気を出したかった。(イスラエル戦も相手の)先発ピッチャーが良かったですけど、ベンチに帰ってくるたびに『1点取りに行こうぜ!』という声が出ていました。早め早めに攻めて、劣勢にならないように。そうすれば、自分たちらしい野球ができると思っています」

 青木の存在感が増してくるのは、むしろこれからだろう。準決勝で対戦する可能性のあるアメリカ、ドミニカ共和国、ベネズエラ、プエルトリコのメジャーリーガーたちの力量と特徴を青木は誰よりも把握している。

「どういう選手か知っていますけど、情報をほしい人とほしくない人がいますから。あと自分が正しいとは思わないので、あくまで参考として聞いてもらいたい。あまり先入観を持ってほしくないですね」

 準決勝以降、侍ジャパンはメジャーリーグで活躍する好投手と対戦していくことになる。これまでのような、のびのびとスイングをさせてもらえるケースは格段に減るだろう。そんな時でも、2次ラウンドで見せた「青木のセカンドゴロ」はWBC制覇へのヒントになるはずだ。

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