青木宣親が放った1本の「セカンドゴロ」にWBC制覇の可能性を見た (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Getty Images

 だが、休養した1次ラウンドの中国戦を除いて、青木が3番の打順から外れることはなかった。それは最年長の選手としてチームを鼓舞してきた献身ぶりだけでなく、青木が打線のつなぎ役として機能していたからだろう。

 その象徴的なシーンがあったのは、2次ラウンドのキューバ戦だった。先発投手の菅野智之が打ち込まれて2対4となった5回裏、一死二、三塁のチャンスで青木に打順が回ってきた。青木はキューバの左腕、ヨアンニ・イエラのスライダーにタイミングが合わず、わずか2球で追い込まれてしまう。しかし、ここから内・外の厳しいコースを攻められながらファウルで粘り、時には際どいボールを見極めて、青木はイエラに8球を投げさせた。そして9球目のスライダーに食らいつき、セカンド前にボテボテのゴロを転がす。2点をリードしていたことからキューバ守備陣は前進守備ではなく、通常の守備陣形を取っており、このセカンドゴロで日本は1点を返すことに成功した。

 こんなチーム打撃ができる3番打者がいることこそ、侍ジャパンの強さを物語っているのではないか――。そう感じさせるセカンドゴロだった。

 青木はこの場面をこう振り返る。

「点を取れる時に取ることが大事だと思っています。あの場面はとりあえず1点でも返していけば、いつでも同点、逆転できるような状況になりますから」

 6試合で10本塁打と破壊力を見せた侍ジャパンだが、青木のセカンドゴロに象徴されるように、「スモールベースボール」でチャンスを広げる場面が随所に見られた。

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