WBC日本の新部署「初期消火」をこなす平野佳寿よ、ありがとう (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Getty Images

 12日のオランダ戦でも、先発の石川歩が3回5失点と炎上して早いイニングで降板。その時も4回からマウンドに上がったのは平野で、やはりオランダ打線を三者凡退に抑えている。オランダ戦の試合後、平野は早いイニングで登板する心境をこう明かしている。

「9回とはちゃうと思うんです。点を与えないというのは同じですけど、まだ前半ということで気持ちの上で余裕を持ってマウンドに上がれるのかなと。今日は初回からしっかりと準備をしていました」

 終わってみればオランダもキューバも、勢いづきそうなところで平野が現れ、風向きが分断されたように見えた。救援投手は時に「ファイアーマン」と呼ばれる。この平野の鮮やかな仕事ぶりは、さながら二次災害を食い止めた消火器のようだった。

 これまでのWBC日本代表の戦い方は、先発投手が早期降板した場合は「第二先発」と呼ばれる先発格の投手がロングリリーフすることが定番だった。だが、オランダ戦では4回の平野を挟んで、5回から第二先発の千賀滉大が投入されている。

 先発投手が早いイニングでノックアウトされた試合では、二番手の投手が「試合を落ち着かせる」必要がある。だが、リリーフ経験の浅い第二先発に、燃え盛った相手打線を鎮火させる役割を任せることはリスクが伴う。継投を担当する権藤博コーチが戦略上のことに口をつぐんでいるため、その思惑は推し量ることしかできないが、平野が早いイニングで投入された意図はここだろう。

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