WBC「イスラエル代表」秘話。
日本も警戒すべき結束力に歴史あり

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Getty Images

 唯一の選手は、投手のシュロモ・リペッツ。今回の代表チームにイスラエル国籍を持っているのは2人だけという報道があったが、実際にイスラエルで生まれたのはこのリペッツだけである。その彼にしても、もう10年来アメリカに生活の基盤を置いている。

 リペッツを含め、現在、イスラエルに住んでいる者は皆無だが、代表チームは、WBCの予選終了後にイスラエルを訪れ、現地の野球場に足を踏み入れている。そこはかつてプロ野球リーグが行なわれていた場所だ。このイスラエル野球の聖地ともいえる「エレツ・イスラエル」に赴いたことで、結束力はより高まった。それは1次ラウンドや2次ラウンドのキューバ戦の戦いにも現れていた。

 1次ラウンドを3連勝で勝ち上がったせいで「隠れた強豪」のような扱いを受けているが、実際のところ、今回のメンバーは盛りを過ぎた元メジャーリーガーとなかなか殻を破れないマイナーリーガーの集まりである。そんな彼らが次々と強豪国を倒していった背景には、チームの結束力があった。

 残念ながら、唯一のイスラエルリーグ経験者のリペッツは、出番のないまま2次ラウンドを前にロースターから外れてしまった。それでも彼はベンチ上のスタンドからチームに声援を送り続けている。

「仕方ないね。トーナメントの途中ではこういうこともある。でも我々の目標はひとつ。ホスト国の日本に勝つことだよ」

 そう語るリペッツだが、実は今大会の目標は次回大会の予選を免れるため1次ラウンドで最下位にならないことと、2次ラウンドに進出することだった。その両方の目標を達成し、さらにアメリカで行なわれる決勝ラウンドの可能性も残されている。イスラエルは結束力という最大の武器を携え日本戦に挑む。

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