やっぱり牧田はすごかった。浮き上がる「魔球」でオランダ打線を制圧 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Getty Images

 1次ラウンド初戦のキューバ戦では9回にマウンドに上がったものの、二死満塁のピンチを招くなど、不安の残る内容だった。この試合を牧田はのちにこう振り返っている。

「緊張してコントロールがバラついてしまいました。手投げになっていたので、自分のなかでムチのように腕を振るイメージで修正しました」

 修正を加えた後、牧田はオーストラリア戦から数えて3イニングをパーフェクトに抑え続けていることになる。オランダの強打線と対峙するにあたっては、こんな工夫もしていたという。

「いつも以上にテンポを遅くして、1球1球を丁寧に投げていました」

 普段戦っているペナントレースとは違い、現在戦っているのは国際大会のホームゲーム。1球投げるたびに大観衆が沸き、マウンドに向かって声援を届けてくれる。しかし、牧田はあえてその流れに乗ることなく、声援が止んでから投球動作に入っていた。

「普段の試合ですと相手の声援もあるんですけど、今回はシーンとしているなかで声が聞こえて、逆に自分のペースを崩されている部分があったので、ちょっと間を置いて、静かになるのを待ってから集中して投げていました。いつもならどんどんテンポよく投げるのですが、今日は一発のあるチームなので、投げ急がないことを意識していました」

 当たり前のように150キロ級の剛腕が登場するWBCの舞台。だが、牧田和久はスピードに頓着することなく、並み居る強打者の猛スイングと大観衆の熱狂をいなしながら、独特の間合いでゲームをコントロールしていく。信頼できるアンダースロー守護神を得た侍ジャパンは、いよいよ4大会連続のセミファイナル進出を視界の先にとらえて、次なる戦いに挑む。

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