やっぱり牧田はすごかった。浮き上がる「魔球」でオランダ打線を制圧 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Getty Images

 試合前、牧田はオランダ打線の打撃練習を見て、その強烈な打球に衝撃を受けたという。だが、同時にこんな感触も得ていた。

「自分特有の下から浮き上がるボールを胸元に投げれば、ホームランはないかな」

 アンダースローは日本のお家芸、と思っている野球ファンは多いかもしれない。だが、実際には海外にもアンダースローは数多くおり、むしろ日本のほうが数は少ないくらいだ。それでも、海外のアンダースローはシンカー系の球種でゴロを打たせる投球が主流であり、牧田の言う「下から浮き上がる」軌道を持った投手は多くない。

 物理的に実際にボールが浮き上がることはありえないが、打者にとって牧田のストレートは地上スレスレのリリースポイントから浮き上がってくる錯覚を起こす。この見慣れない球道にオランダ打線は明らかに戸惑っていた。

 延長11回からタイブレークに入り、2点を勝ち越したその裏。続投した牧田は2番から始まるオランダ打線をまたもや3人で封じた。

「ホント、マウンドに上がるまでは臆病じゃないですけど、『打たれたらどうしよう』っていうふうに思っていました。実際にマウンドに立って、投げてみて、自分のボールが結構差し込めていたので、これはいけるなと」

 大会前は「絶対的守護神不在」と言われていた侍ジャパン。2次ラウンド初戦にして、いよいよ牧田に守護神のムードが漂ってきた。

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