「小久保采配を絶賛!」まさかの織田信長、WBC1次ラウンド観戦記 (3ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • photo by Kyodo News

 氏は当時を思い返すように言うが、最近の研究では火縄銃三段撃ちはなかった説が主流とされていることも、ここに付け加えておきたい。

 話を試合に戻す。確かにそれまで均衡を保ってきた重苦しい試合で、一挙5点を加えたこのイニングは決定的だった。しかし氏は、スコアよりも小久保采配にこそ注目すべきだと指摘する。

「このイニングで注目すべき点は2つある。1つが8番に松田を据えたそのオーダーよ。これはワシがハゲネズミを重く用いて、天下統一へ大きく前進したのとよく似ておる」

 ハゲネズミとはおそらく豊臣秀吉氏のこと。ちなみに信長氏は天下を統一はしていないが、うっかり指摘しようものなら手打ちにされかねないので、とりあえず疑いのない目で頷き、話を先に進めてもらう。

「WBC前の強化試合で松田は、11打数2安打と調子を崩しておった。一方、田中広輔は9打数3安打。成績だけを見れば、田中を使うのが妥当であろう。しかし監督の決断は松田だった。そしてヤツは長篠の戦いにおける徳川家康の如く活躍した。小久保監督はあえて不調の選手を要(かなめ)に配し、信頼に応えられるかどうかを見極めたのだ。ワシと同じく将の器よ」

 結局は自慢話になる信長氏。そもそも8番は要なのか? だいたい田中はショートが本業だし、もともとサードは松田しかいないし、なぜかハゲネズミの話が家康の話に変わっているし......と思いつつも、真顔のままインタビューを続ける。

「そしてもう1つ称賛すべき小久保采配は、5回に飛び出した中田翔の盗塁に他ならぬ」

 氏は大量得点前のワンプレーに注目する。確かにあのとき、意外な選手が走った驚きはあった。1死1塁の場面。点差はまだ1点しか開いていない。次の1点がどちらに入るかで試合展開が大きく変わる状況だ。

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